STAGE 7
完成図を描く
歯車・吸排気口・点火プラグ
🎯 ミッション
完成図を仕上げよう。歯車・偏心軸を重ねる位置、点火プラグが「部屋がいちばん小さくなる側のくびれ」に、排気口と吸気口が「反対側のくびれの手前と先」にある理由を説明でき、自分で選んだ e と R で図を描いて保存できれば合格。
未達成

ねこ博士
いよいよ最後だ。ハウジング、ローター、部屋の動きまで式で出せた。今日は残りの部品を描き足して、完成図にしよう。まずは歯車と偏心軸。STAGE3で、固定歯車の半径は 2e、ローターの内歯車の半径は 3e と決まった。固定歯車は O が中心、ローター歯車は C が中心だ。ただし歯車は、ローターの横のふた(サイドハウジング)側に付いていて、ローターの断面とは奥行きが違う。だから完成図では、歯車の円を点線で重ねて描く。偏心軸は、O を中心とする軸の円と、C を中心とする太い円盤を描けばいい。

うさ美
部屋の中で火をつける部品と、混合気の出入り口も必要ですね。どこに置けばいいんですか?

ねこ博士
STAGE6の面積の変化を思い出そう。部屋がいちばん小さくなる場所は、ハウジングの2つのくびれだった。1つの部屋は、上のくびれで小さくなり、次に下のくびれで小さくなる。4行程のうち、小さくなる瞬間は「圧縮の終わり」と「排気の終わり」の2回。だから、片方のくびれを圧縮の終わり(点火)、もう片方を排気の終わり(吸排気)に割り当てる。

うさ美
では点火プラグは、片方のくびれのところに付ける。部屋がいちばん小さくなった瞬間に火花を飛ばせるように、ということですか?

ねこ博士
そう。実物では、くびれの部分の部屋は細長く伸びた形になるから、火が端まで届きやすいようにプラグを2本、少し離して付ける。ローターの進む向きで先にある方をリーディング(先行)、後ろの方をトレーリング(後行)と呼ぶ。

ねこ博士
吸気口と排気口は、反対側のくびれの両脇だ。部屋は排気の行程で小さくなりながらくびれに近づく。だから、回転の向きで見てくびれの手前に排気口を開けておけば、燃えかすが押し出される。くびれを過ぎると部屋は大きくなり始めるから、くびれの先に吸気口を開けておけば、新しい混合気が吸い込まれる。排気口はハウジングの壁そのものに穴を開け(ペリフェラルポート)、吸気口は横のふたに開ける(サイドポート)ことが多い。図では、排気口を壁の切れ目、吸気口を壁ぎわの楕円で描こう。

うさ美
ローターが反時計回りに回るなら、部屋は右→上→左→下→右の順に動きます。上のくびれで点火するなら、下のくびれの手前は左下、先は右下。だから排気口は左下、吸気口は右下、ということですか?

ねこ博士
その通り。これで、式で決まる部品は全部そろった。ここから先は、自分の寸法で描いてみる番だよ。
寸法(mm)
表示
e と R を変えると、ハウジング・ローター・歯車・部屋がすべて式から描き直される。K=R/e が 3 以下だとハウジングにループができて成立しない。「SVG で保存」で、寸法どおり(mm 単位)のベクター図がダウンロードできる。プラグ(⚡)は上のくびれ、排気口(EX)は左下、吸気口(IN)は右下

うさ美
e と R の2つを決めるだけで、本当に全部の形が出てきました。作図の手順を、最初から通しで整理してもいいですか?

ねこ博士
ぜひそうしよう。旅の地図として、手順をまとめておくよ。
【ロータリーエンジン作図の手順書】 決める数は e(偏心量)と R(創成半径)の2つ。実機は K=R/e が 6〜8(13B:e=15、R=105、幅 b=80)
- ハウジング:θ を 0°→360° と動かして点 (R cos θ+e cos 3θ, R sin θ+e sin 3θ) を打ち、なめらかに結ぶ。O からの距離は最大 R+e、最小 R−e(くびれ)
- ローターの中心と頂点:軸の角度 α を決め、C=(e cos α, e sin α)。頂点は C から距離 R、向き α/3+120°k(k=0, 1, 2)
- ローターの辺:辺の中点を C から R−2e の位置にとり、2頂点と中点を通る半径 ρ=(h²+s²)/(2s) の円弧を描く(h=R√3/2、s=R/2−2e)
- 歯車と偏心軸:O 中心・半径 2e の固定歯車、C 中心・半径 3e のローター歯車を点線で。O に軸の円、C に偏心円盤
- 点火プラグ:片方のくびれ(O から R−e)の壁に2本(リーディング/トレーリング)
- 吸排気口:反対側のくびれの、回転の向きで手前に排気口、先に吸気口
- 確かめ:α を進めて、頂点が壁をなぞり、辺が壁からはみ出さず、3つの部屋が順に大きさを変えることを見る。排気量=3√3·e·R·b

うさ美
最初に「近似」と断っていましたが、実物と違うところを、まとめて教えてください。

ねこ博士
主なものは3つだ。1つめ、実物のハウジングの壁は、頂点の軌跡そのものではなく、アペックスシールの厚みのぶんだけ外側に平行にずらした曲線になっている。2つめ、ローターの辺は包絡線に近い曲線で、しかも燃焼室のくぼみが掘ってある。だから圧縮比は今日の計算より低い。3つめ、実物の歯車には歯があり、軸には軸受けや冷却の通り道があって、図はもっと込み入っている。でも、形の骨格はすべて今日の式のとおりだ。式が分かっていれば、そういう補正は「骨格に肉を付ける」だけの話になる。

ねこ博士
これで旅は終わりだ。おむすびがなぜ回るのか、なぜあの繭形なのか、その形をどう決めればいいのか。全部、cos と sin と三平方の定理で説明できた。お疲れさま。
【このステージの成果】
歯車:固定歯車(O、半径 2e)とローター歯車(C、半径 3e)を点線で重ねる。偏心軸:O の軸円と C の偏心円盤
点火プラグ:部屋がいちばん小さくなる側のくびれに2本(リーディング/トレーリング)
吸排気口:反対側のくびれの、回転の向きで手前が排気口(壁の穴)、先が吸気口(横ぶたの穴)
近似で省いたもの:アペックスシールの厚みぶんの平行曲線、ローターの辺のくぼみ、歯・軸受け・冷却路などの細部
確認クイズ
Q1. 点火プラグは、ハウジングのどこに付ける?
正解! 圧縮の終わりに部屋がいちばん小さくなるのはくびれの場所。細長い部屋の端まで火が届くように、リーディングとトレーリングの2本を付ける。
Q2. 回転の向きに沿って見たとき、吸気口・排気口・くびれの並びは?
正解! 部屋は小さくなりながらくびれに近づくので、手前に排気口。くびれを過ぎて大きくなり始めるところに吸気口。
Q3. この旅の作図で「近似」として省いたものは?
正解! 骨格(ペリトロコイド、頂点、辺の膨らみ、歯車の半径)は式のとおり。実物はそこに、シールの厚みぶんの平行曲線、燃焼室のくぼみ、軸受けや冷却路といった肉付けが加わる。