STAGE 4
頂点が描く曲線
ハウジング=ペリトロコイド
🎯 ミッション
ハウジングの形を式で描こう。頂点の軌跡(ペリトロコイド)の式、中心からの距離が最大 R+e・最小 R−e になる理由、ふくらみが2つになる理由、そして R/e の比で形が変わることを説明できれば合格。
未達成

ねこ博士
STAGE3で、頂点の座標が e、R、α だけで書けた。今日はそれを実際に描いてみよう。ハウジングの壁は、頂点がいつも壁に触れ続けるように作られている。頂点が壁から離れれば部屋の仕切りに隙間ができるし、壁にめり込むこともできない。つまり、壁の形は頂点の通り道そのものなんだ。頂点の座標に α を 0° から少しずつ入れて点を打っていけば、壁の形が浮かび上がる。

うさ美
頂点は3つあります。3つとも別々の道を描いたら、壁が3本必要になりませんか?

ねこ博士
それを式で確かめてみようか。頂点1の向きは α/3+120° だったね。頂点0の式で、α のかわりに α+360° を入れてみてごらん。

うさ美
頂点0の x は e cos α+R cos(α/3)。α を α+360° にすると、e cos(α+360°)+R cos((α+360°)/3)。cos は 360° 回ると元に戻るので、最初の項は e cos α のまま。2つめは (α+360°)/3=α/3+120° だから、R cos(α/3+120°)。これは頂点1の式と同じです。y も同じです。つまり頂点1は、頂点0が軸1周ぶん先に進んだ場所にいる。3つの頂点は同じ1本の道を、軸1周ずつずれて追いかけている、ということですか?

ねこ博士
その通り。だから壁は1本でいい。この曲線には名前があって、ペリトロコイドという。トロコイドというのは「転がる円に付けた点が描く道」のことで、自転車の車輪の反射板が描く波打った道もその仲間だ。ロータリーエンジンでは、ローターの歯車が固定歯車のまわりを転がるから、頂点の道がトロコイドになる。

ねこ博士
式を少し見やすくしておこう。ローターの角度 θ=α/3 を使って書き直すと、α=3θ だから、頂点0の座標はこうなる。
【ハウジングの式(ペリトロコイド)】
x=R cos θ+e cos 3θ
y=R sin θ+e sin 3θ
θ を 0° から 360° まで動かすと、壁を1周する(軸は α=3θ で3回転)
e=15 mm に固定し、R=K×e。α を進めると頂点0(赤)が軌跡を描き、3回転(1080°)で繭形が閉じる。K を 3 より小さくすると曲線が自分自身と交わってループができ、9 より大きくするとくびれがなくなって楕円に近づく。13B は K=7

うさ美
点を打っていくと、繭形になりました。でも、なぜふくらみが2つなんでしょう。式には 3θ が入っているので、3つになりそうな気もします。

ねこ博士
いい疑問だね。中心 O から頂点までの距離を調べると分かる。距離を r としよう。O から C までが e、C から頂点 P までが R。O→C の向きは 3θ、C→P の向きは θ だ。ここで、図全体を回しても長さは変わらないことを使う。C→P が真横(右向き)になるように図を回してごらん。

うさ美
図全体を θ だけ逆向きに回すと、C→P の向きは θ−θ=0°、つまり真横。O→C の向きは 3θ−θ=2θ になります。だから C=(e cos 2θ, e sin 2θ)、P は C から右へ R 進んで (e cos 2θ+R, e sin 2θ)。O から P までの距離は三平方の定理で、
r²=(e cos 2θ+R)²+(e sin 2θ)²
=e²(cos 2θ)²+2eR cos 2θ+R²+e²(sin 2θ)²
=R²+e²+2eR cos 2θ。
最後は (cos 2θ)²+(sin 2θ)²=1 を使いました。
r²=(e cos 2θ+R)²+(e sin 2θ)²
=e²(cos 2θ)²+2eR cos 2θ+R²+e²(sin 2θ)²
=R²+e²+2eR cos 2θ。
最後は (cos 2θ)²+(sin 2θ)²=1 を使いました。

ねこ博士
そう。r²=R²+e²+2eR cos 2θ。この式に、ふくらみが2つの理由が全部入っている。cos 2θ がいちばん大きい 1 になるのは 2θ=0°、360° のとき、つまり θ=0°、180°。そのとき r²=R²+2eR+e²=(R+e)² だから、r=R+e。いちばん小さい −1 になるのは θ=90°、270° で、r=R−e。θ が1周する間に、距離は2回大きく、2回小さくなる。それが2つのふくらみと2つのくびれだ。

うさ美
13B なら、いちばん遠いところが 105+15=120 mm、いちばん近いところが 105−15=90 mm。長いほうの差し渡しが 240 mm、短いほうが 180 mm ですね。

ねこ博士
その通り。それから「3θ が入っているのに2つ」の答えも、いま出てきたね。距離を決めていたのは 3θ と θ の差の 2θだった。軸がローターの3倍の速さで回るから、向きの差が2倍の速さで変わる。ふくらみの数は、この差の速さで決まるんだ。

うさ美
ということは、もし軸がローターの4倍の速さで回る機械なら、差は 3θ で、ふくらみが3つの壁になる、ということですか?

ねこ博士
そう。そういう仲間の機械も考えられていて、そのときローターの頂点は4つになる。頂点の数がふくらみの数より1つ多い、という関係だね。ロータリーエンジンは「ふくらみ2つ、頂点3つ」の組合せで、それが STAGE3 の歯数の比 2:3 に対応している。

うさ美
比 K=R/e を変えると形が変わるはずですが、どんな値でもエンジンになりますか?

ねこ博士
ならない。K が 3 より小さいと、曲線が自分自身と交わってループができてしまい、壁として使えない。K が 3 から 9 の間では、くびれのところが少し内側にへこむ。9 より大きいと、へこみが消えて、楕円に近いなめらかな形になる。実際のエンジンでは K は 6 から 8 くらいが使われていて、13B は 7 だ。K を小さくすると部屋の大きさの変化が大きくなって、たくさん圧縮できる。でも小さくしすぎると頂点が壁に当たる角度がきつくなって、密封部品が傷みやすい。そのつり合いで決まっているんだよ。

ねこ博士
これでハウジングが描けた。次のステージでは、ローターの辺の形を決める。頂点は決まっているけれど、辺をどれだけ膨らませていいかは、ハウジングの形から逆算するんだ。
【このステージの成果】
壁の形=頂点の軌跡。3つの頂点は同じ1本の道を軸1周ずつずれて追いかける
ペリトロコイド:x=R cos θ+e cos 3θ、y=R sin θ+e sin 3θ(θ:0°→360° で1周、α=3θ)
中心からの距離:r²=R²+e²+2eR cos 2θ(図を回して C→P を真横にし、三平方の定理)
最大 R+e(θ=0°, 180°)、最小 R−e(θ=90°, 270°)。3θ と θ の差 2θ が2つのふくらみを作る
K=R/e:3 未満はループ、3〜9 はくびれがへこむ、9 超は楕円に近い。実機は 6〜8(13B は 7)
確認クイズ
Q1. ハウジングの繭形の曲線は、何の軌跡か?
正解! 頂点はいつも壁に触れ続けるので、壁の形は頂点の通り道そのもの。3つの頂点は同じ曲線を軸1周ずつずれてたどる。
Q2. 中心 O からハウジングの壁までの距離の、最大と最小は?
正解! r²=R²+e²+2eR cos 2θ で、cos 2θ=1 のとき r=R+e、cos 2θ=−1 のとき r=R−e。13B なら 120 mm と 90 mm。
Q3. 比 K=R/e を 3 より小さくすると、頂点の軌跡はどうなる?
正解! K が小さいほど e cos 3θ の項が効いて曲線が暴れ、3 未満ではループができる。実際のエンジンは K=6〜8 で、13B は 7。