🔧 ロータリーエンジン、作図の書
STAGE 1 ― おむすびは、なぜ回る ―
クリア 0 / 7
⚛ 量子の冒険の書
STAGE 1

おむすびは、なぜ回る

観察と、角度から座標を取り出す道具
🎯 ミッション
ロータリーエンジンの3つの部品(ハウジング・ローター・偏心軸)の名前と、「曲線を式で描く」という考え方を知ろう。半径 r の円の上で角度 θ の点の座標が (r cos θ, r sin θ) と書ける理由を説明できれば合格。
未達成
ねこ博士
今日から新しい旅を始めよう。テーマはロータリーエンジンだ。自動車のエンジンといえば、筒の中でピストンが上下に往復するものがふつうだけれど、ロータリーエンジンには往復する部品がない。三角おむすびの形をしたローターが、繭(まゆ)のような形の部屋の中をぐるぐる回るだけで動く。1950年代にドイツのフェリクス・ヴァンケルが考え、1967年に日本のマツダが世界で初めて量産車に載せたエンジンだよ。
うさ美
テレビで見たことがあります。中でおむすびが回っているのに、はみ出しもしないし、隙間もできない。あの形はどうやって決めたんですか?
ねこ博士
それがこの旅の主題なんだ。ゴールを先に言っておこう。ハウジングの繭形も、ローターのおむすび形も、数学の式だけで描けるようになる。定規で写し取るのではなく、たった2つの数(部品の寸法)を決めれば、あとは計算で形が出てくる。そういう作図だよ。まず部品の名前を3つ覚えてほしい。外側の繭形の壁をハウジング、中で回る三角形をローター、ローターの真ん中を貫いて回転を外に取り出す軸を偏心軸(へんしんじく)という。英語ではエキセントリックシャフトだ。
うさ美
「偏心」は、心(中心)が偏(かたよ)っている、という意味ですか? 軸なのに中心がずれているなんて、変な名前です。
ねこ博士
その通りの意味で、そこが仕掛けの心臓部なんだけれど、それは次のステージで話そう。今日は道具の準備だ。「式で描く」とはどういうことか、いちばん簡単な図形、円で練習する。
ハウジング(繭形の壁) ローター (三角おむすび) 偏心軸(回転を取り出す軸)
ロータリーエンジンの3つの部品。外側の繭形の壁がハウジング、中で回る三角おむすびがローター、その中心を貫くのが偏心軸(エキセントリックシャフト)。ローターの3つの頂点は、いつも壁に触れながら動く
うさ美
円なら、コンパスで描けます。式で描くというのは、どういうことですか?
ねこ博士
コンパスは「中心から同じ距離の点を全部たどる」道具だね。式で描くときも考え方は同じで、曲線を「点の集まり」と見て、その1つ1つの点の位置を式で作る。点の位置は、横の位置 x と縦の位置 y の数の組 (x, y) で表す。これを座標という。式で座標を次々に作ってグラフ用紙に打っていけば、どんな曲線でも描けるし、コンピュータに描かせることもできる。
うさ美
円の上の点の座標を、どうやって式にするんですか? 中心から同じ距離、というのは分かりますが、「距離が同じ」だけでは x と y がいくつか決まりません。
ねこ博士
いい質問だね。角度を使うんだ。中心から真横(右向き)に線を引いて、そこから反時計回りに何度回ったところか、で円の上の点を指定する。この角度を θ(シータ)と呼ぼう。角度が決まれば点は1つに決まる。あとは「角度 θ から座標 (x, y) を取り出す道具」があればいい。それが cos(コサイン)と sin(サイン)だ。名前は難しそうだけれど、中身はただの「角度→座標」の対応表だよ。
ねこ博士
定義はこうだ。半径1の円を描いて、角度 θ のところにある点を見る。その点の横座標を cos θ、縦座標を sin θ と呼ぶ。それだけなんだ。たとえば θ=0° なら点は真横の (1, 0) にあるから、cos 0°=1、sin 0°=0。θ=90° なら点は真上の (0, 1) だから、cos 90°=0、sin 90°=1。
うさ美
θ=60° なら、どうなりますか。中心と、真横の点 (1, 0) と、60° の点の3つを結ぶと、2辺が半径1で、間の角が 60° だから……正三角形です。正三角形を真ん中で半分に折ると、底辺の半分は 0.5。だから横座標は cos 60°=0.5。縦座標は三平方の定理で、1²=0.5²+y² から y²=0.75、y は約 0.866 です。sin 60° ≈ 0.866、ということですか?
ねこ博士
そう。cos や sin の値は、そうやって図形から求められる角度もあるし、そうでない角度は電卓やコンピュータが計算してくれる。大事なのは意味のほうだよ。それから、いま使った三平方の定理は、どの角度でも成り立つ。半径1の円の上の点だから、(cos θ)²+(sin θ)²=1。この関係はあとで何度も使う。
うさ美
半径が1ではなく r のときは、図形をそっくり r 倍に拡大するだけだから、座標も r 倍。円の上で角度 θ の点は (r cos θ, r sin θ)、ということですか?
ねこ博士
その通り。それが「円を式で描く」の全部だ。θ を 0° から 360° まで少しずつ動かしながら、点 (r cos θ, r sin θ) を打っていけば円になる。このように、動かす数(ここでは θ)のことを媒介変数(ばいかいへんすう)、あるいはパラメータという。旅の間じゅう、この「パラメータを動かして点を打つ」やり方で形を描いていくよ。
角度 θ を動かすと、点 (r cos θ, r sin θ) が円の上を進む。横座標が r cos θ、縦座標が r sin θ。「30° ごとに点を打つ」で、グラフ用紙に点を打って円を描く様子を再現できる
うさ美
円の中心が原点ではなくて、たとえば (3, 2) にあるときは、どうすればいいですか?
ねこ博士
中心をずらすだけだから、座標に足せばいい。中心が (a, b) の半径 r の円の上の点は、(a+r cos θ, b+r sin θ) だ。じつは、これが次のステージの主役になる。ロータリーエンジンでは、ローターの中心そのものが動くんだ。動く中心に、さらに角度を足して頂点の位置を作る。今日の道具だけで、それが全部書けるよ。
ねこ博士
最後にひとつ、旅の約束を。ここで描く形は「理屈の上での形」だ。実物のエンジンでは、ローターの頂点に付いている密封部品(アペックスシール)の厚みのぶん壁を少し外側にずらしたり、ローターの面に燃焼室のくぼみを掘ったりと、細かな補正が入る。この旅ではそういう補正は省いて、形の骨格を式から出すことに集中する。そう断ったうえで、驚くほど実物に近い図が出てくるのを見てもらおう。
【このステージの成果】 部品の名前:ハウジング(繭形の壁)・ローター(三角おむすび)・偏心軸(中心がずれた出力軸) 曲線は「点の集まり」。点の位置は座標 (x, y) で表し、式で作れば描ける cos θ・sin θ の定義:半径1の円の上で、角度 θ の点の横座標が cos θ、縦座標が sin θ。(cos θ)²+(sin θ)²=1 半径 r・中心 (a, b) の円の上で角度 θ の点:(a+r cos θ, b+r sin θ)。θ を 0°→360° と動かすと円になる(θ は媒介変数)

確認クイズ

Q1. cos θ とは何か?

Q2. 原点を中心とする半径 r の円の上で、角度 θ の点の座標は?

Q3. 中心が (3, 2) の半径5の円の上で、角度 θ の点の座標は?

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